【AI犯罪の新時代到来か?】次にかかってくる詐欺電話は、あなたの年収を知っている。

本日も六本木某所から。
今日は「AI × CYBER SECURITY — サイバー脅威の新時代」7日間特集の4日目です。
1日目は、AIによって攻撃のコストが下がる問題。
2日目は、AI開発ツールが攻撃の入口になった事件。
3日目は、AI社員そのものが外部の情報に操られる問題。
そして今日は、多くの人が一番気になるテーマです。
AIを使えば、一人の攻撃者が銀行を破れるのか。
実は、この秋、それに近いことが現実に起きました。
韓国の銀行が、次々と攻撃された
2026年9月末から10月にかけて、韓国の銀行や金融機関が相次いでサイバー攻撃を受けました。
被害を受けたのは、新韓銀行、KB国民銀行、ハナ銀行など、少なくとも7つの金融機関です。
最も被害が大きかった新韓銀行では、約2万5,000人分の顧客情報が流出しました。
流出したのは、
- 氏名
- 電話番号
- 年収
- 借入可能額
韓国の李在明大統領は、一部の攻撃でAIが使われた兆候があると発言しています。
一方で、パスワードやワンタイム認証コードは盗まれておらず、顧客がお金を失った被害は確認されていません。
ここに、今回の事件の「現実」と「限界」の両方が詰まっています。
攻撃者は、銀行の正面玄関を破っていない
僕が一番注目したのは、攻撃の入口です。
攻撃者は、銀行の中枢システムや、顧客が使う銀行アプリを直接破ったわけではありません。
狙われたのは、
- ローン仲介人が顧客情報を照会するためのシステム
- 社員が使う業務用のモバイルシステム
- 営業支援のためのシステム
いわば、銀行の「脇の扉」です。
新韓銀行では、ローン仲介人向けの照会サービスにあった携帯電話の本人確認が突破されたと報じられています。
銀行は、正面玄関には何重もの鍵をかけています。
でも、業務のために作られた小さな扉は、正面ほど守られていないことがある。
そして、AIはこうした小さな扉を探すのが得意です。
数えきれないページや入力欄を、休まず、一つずつ試せるからです。
AIは「一人で」銀行を破ったのか?
ここは正確に書いておきます。
韓国の金融セキュリティ機関の担当者は、ログの分析から、AIは人間の関与なしに単独で動いたわけではないと説明しています。
つまり、今回の事件は、
AIが勝手に銀行を襲った話ではありません。
人間の攻撃者が、AIを道具として使い、作業の量と速さを何倍にも増やした話です。
これが、今のAI攻撃の「現実」だと思います。
一人の攻撃者が、以前ならチームで何週間もかかった偵察や試行を、AIを使って短時間でこなせるようになった。
その結果、巨大な金融機関の弱い部分に手が届いてしまった。
それでも、お金は盗まれなかった
ここで「限界」の話をします。
今回、流出したのは情報で、お金ではありませんでした。
銀行の送金や取引の仕組みは、
- パスワード
- ワンタイム認証
- 取引の監視
- 人間による確認
といった、何重もの壁で守られています。
AIで脇の扉を見つけることはできても、お金が動く場所までたどり着くには、まだ高い壁がある。
少なくとも今回は、その壁が機能しました。
一方で、同じ10月には、まったく別の種類の事件も起きています。
10月29日、暗号資産取引所のBinanceから約63億ドル、日本円で約9,500億円相当の暗号資産が流出しました。
FBIは北朝鮮の関与を発表しています。
Binanceによると、入口はエンジニア1人のノートPCでした。
この事件でAIが使われたという報道はありません。
ただ、ここから学べることがあります。
どれほど巨大な金融システムでも、最後に破られるのは、たった1台の端末や、たった1つの小さな扉だということです。
本当に怖いのは、「次の詐欺」
ここからは、僕の考察です。
今回の韓国の事件で、僕が一番怖いと思ったのは、お金ではなく「年収」と「借入可能額」が盗まれたことです。
想像してみてください。
ある日、銀行を名乗る人から電話がかかってきます。
「〇〇様、年収△△万円で、現在の借入可能額は□□万円ですね。今なら特別金利でご案内できます」
自分の名前も、年収も、借入可能額も、すべて正確。
あなたは、それが詐欺だと見抜けるでしょうか。
実際、韓国の金融当局は、盗まれた情報が本物らしく見える偽の融資勧誘に悪用されるおそれがあるとして、消費者に注意を呼びかけています。
AIは、攻撃者が情報を盗む手間を減らしただけではありません。
盗んだ情報を使って、一人ひとりに合わせた、本物そっくりの詐欺文を大量に作ることもできます。
つまり、AI時代の金融犯罪は、
銀行の金庫を破るのではなく、
あなた本人に、自分からお金を出させる方向へ進んでいく。
僕はそう考えています。
僕たちが今日からできること
銀行の守りは、銀行に任せるしかありません。
でも、最後の壁は、僕たち自身です。
1. 銀行や金融機関からの連絡には、その場で答えない
電話やメッセージで来た連絡は、一度切って、公式アプリや公式サイトに載っている番号から自分でかけ直す。
2. 「自分の情報を正確に知っている」ことを、本物の証拠にしない
これからは、名前も年収も知っている詐欺師がいる前提で考える。
3. 「今だけ」「特別に」「急いで」は疑う
急がせるのは、考える時間を奪うためです。
4. ワンタイム認証のコードは、誰にも教えない
銀行の担当者が、電話でコードを聞くことはありません。
最後に
AIを使えば、一人の攻撃者が銀行を破れるのか。
今回の事件を見る限り、僕の答えはこうです。
AIは、一人の攻撃者が巨大な組織の「弱い部分」に手を届かせることを可能にした。
でも、お金が動く場所までは、まだ簡単には届かない。
ただし、攻撃者はそれをわかっています。
だからこそ、次に狙われるのは、銀行の金庫ではなく、僕たち一人ひとりです。
AIが進化するほど、詐欺は本物に近づいていきます。
最後に自分を守れるのは、「すぐに答えない」という、とても地味な習慣なのかもしれません。
明日のDAY 05も、AI時代のセキュリティを一緒に考えていきます。
皆さんは、自分の年収を正確に言い当てる電話がかかってきたら、詐欺だと見抜ける自信はありますか?